年賀状の歴史と由来
年末といえば、とにかく忙しく、やることが沢山ありますが、中でも、すぐに思い浮かぶ、年末の作業といえばやっぱり、年賀状書きですよね。
年賀状を送る住所リストを見ながら、「暫く会ってないけど、あの人元気かな~」などと考えながら書く年賀状は、どこか懐かしい気分になったり、楽しい作業でもあるのですが、書く量が多いとやっぱり結構大変で、つい、「全部メールで済ませれば楽なのに!」なんて思う事もあります。
ところで、そんな、年賀状作業が少し面倒になってしまった時って、「年賀状って、いつから始まったんだろう?」「誰が何のために書き始めたんだろう?」とその歴史や由来について、考えたことはありませんか?
私はあります。まあ、ちょっとした、現実逃避ですね。
でも、そう考えても、作業に戻ると忘れてしまって、今まで結局、きちんと調べたことは無いんですよね…。
そこで、今回はこの、年賀状の歴史と由来について、ちゃんと調べてみました!
私のように、毎年年賀状書き中に疑問に思って、そのままモヤモヤしていた方、ぜひ、読んでみてくださいね!
世界の年賀歴史について
年賀とは、新年、年始の祝賀やお祝いという意味で、この年始のお祝いや、新年を祝う何かを贈る習慣自体は、実は古代(エジプトやメソポタミアなど四大文明の時代)には既にあったと言われています。
たとえば、日本の年賀状と似たもので、海外には、新年や季節の祝日を祝うグリーティングカードというものがありますよね。
これの歴史をたどると、4000年前のエジプトに至り、当時、エジプト人が新年のお祝いに、「ご多幸をお祈りします」と刻まれた、スカラベと呼ばれる護符を贈っていたことが、古代のグリーティングカードにあたるもの、と考えられているんです。
また、古代ローマでも、新年にお祝いの品(果物など)の絵が描かれた粘土の書字板、新年のお祝いの言葉が書かれた彫像やメダルなどを贈る風習がありました。
こんな感じで、世界でも、古い時代から、色々な場所で、新年のお祝いに、書簡や贈り物を贈る風習があったんですね。
そして、暦があり、陰陽道などの影響で、新年やお正月が重視され、儒教など礼節を旨とする文化をもつ東アジア(中国・朝鮮半島・日本)も、当然、古くからそういった、年賀の書状は交わされていました。
そんな世界の文明や、年賀の歴史が、色々絡み合って、日本の年賀状に繋がっていると考えると、なんだかロマンを感じますよね!
日本の年賀状の歴史と由来
前項では、世界にも年賀はある、という大まかな話を書きましたが、ここでは、日本の年賀状についての、歴史と由来を、詳しく書いていきますね。
年賀状のはじまり
日本の年賀状が、最初は、いつ誰によって書かれ、出されたのかは、史料が残っておらず、残念ながら、現在はっきりした由来がわかっていません。
しかし、日本では、奈良時代から新年の年始回り(挨拶回り)をする行事があり、平安時代には貴族や公家にもその風習が広まり、挨拶が行えない遠方の人などへの、年賀の書状が送られるようになった、と言われており、それが年賀状のようなものだと考えれば、少なくとも、平安時代には年賀状(のようなもの)はあった、と考えられます。
ちなみに、平安後期に藤原明衡によってまとめられた、手紙文例集「雲州消息」には年始の挨拶を含む文例が数編おさめられていることから、この頃には、少なくとも貴族階級の中では、離れたところに住む人に、年賀の書状を出す風習が広まっていたことがわかります。
平安時代に既に、年賀状の文面の文例集みたいなものがあった、というのが、なんだかおもしろいですよね。数百年~千年前くらいの昔の貴族も、「年賀のメッセージ、なんて書いたらいいの~?」なんて、悩んでいたのかと思うと、ちょっと親近感がわいてしまいます。
中世~近世の年賀状
奈良時代や平安時代は貴族が行っていた年始の挨拶や、年賀の書状ですが、それは、やがて、武家社会でも一般化しました。
中世や戦国時代を通じて、日本では、駅伝や飛脚などの制度が確立してきました。つまり、人や馬などを使った、通信手段ですね。
これにより、一般の書状はもとより、年賀のための書状も、武家社会で増えていったと考えられています。実際に、戦国大名が、賀詞(祝いの言葉)をしたためた書状も、多く現存しています。
これが、江戸時代になると、街道が整備され、飛脚制度が更に充実します。
そして、江戸中期には町人文化も盛り上がり、これまでは遠隔地への配達が主だった飛脚だけでなく、江戸市中を配達する、「町飛脚」も多く現れはじめました。武士階級だけでなく、庶民も気軽に手紙が出せるようになったわけです。
そして、江戸時代の日本は、寺子屋などでの庶民教育のおかげで、武士だけでなく、庶民も読み書きが普通にできる国でした。
このことから、年始の口頭での挨拶に変わる、年賀の書簡(簡易書簡)を送る風習が武士だけではなく、一般庶民にも広まっていった、と考えられています。
年賀郵便のはじまり
明治時代になると、1871年に、ついに郵便制度が始まります。
しかし、まだ年賀は書状で送る人が殆どだったため、数は多くありませんでした。
ですがその後、1873年に郵便はがきが発行されると、年始の挨拶を安価で簡単に送れるということで、はがきで年賀状を送る風習が人々の間に急速に広まっていきます。1887年には、年賀状を出す事が年末年始の行事として国民に定着しました。
しかしそれは、年賀状の激増により、年末年始にかけて郵便取扱量が何十倍にも増え、処理や到着の遅れなどのトラブルを引き起こす事になりました。
特に、人々には「1月1日」の消印が人気で、それを押してもらうために年末の26日~28日と元旦当日あたりの郵便物が増えすぎて、それはもう、処理が大変だったそうです。
そこで、この問題に対処するために始まったのが、通常郵便と、年賀状を別枠として扱う、年賀郵便特別取扱の制度です。
一定時期の間に、指定された郵便局に年賀状を持ち込めば、1月1日の消印で、新年い配達しますよ~という仕組みです。
ちなみに、この年賀郵便特別取扱をしてくれる郵便局は、最初は指定されたいくつかの局だけだったのですが、徐々に増えていき、1905年には、全国すべての郵便局で取り扱い可能となりました。また、1906年には年賀特別郵便規則という法律も交付され、この制度が完全に確立されます。
つまり、現在の、「年賀」の朱印があるものは年賀はがき扱いをされ、配達などが普通郵便とは別扱いになるこの制度は、こういう出来事が発端で、対処する工夫から始まったものだったのですね。
日本人の、年賀状出そう!出さなきゃ!という気持ちが、制度を変えた、と考えると年賀状の風習って、なんだかすごく、特別なものに思えますね。
年賀状の中止
国民の風習として愛されてきてきた年賀状と、それを扱ってきた年賀郵便特別取扱制度ですが、実は、この制度が休止になった年や、期間もあります。
1923(大正12)年の関東大震災により中止
1926(大正15)年の大正天皇崩御により中止
1940(昭和15)年の時局悪化により当面の間中止
主に、この3つですね。最後の1940年は、戦争によるもので、その後、年賀郵便の制度の中止が数年続きます。
1941年には太平洋戦争に突入し、年賀状自粛の声が高まり、1945年の終戦を迎えても、各家庭に年賀状は殆ど届かなかったといいます。
その翌年の1946年になっても、社会の混乱から、年賀状を出す雰囲気では全くなく年賀郵便特別取扱は再開されませんでした。
年賀状の復活
1940年に中止された年賀郵便特別取扱が復活したのは、1948年になってのことです。
終戦から暫く経ち、世の中にもやっと「年賀状出そうかな」と思えるゆとりが出てきた、ということですね。
ちなみに、この1948年の年賀状取り扱い量は、実は戦前のピーク時の半分にも至らず、戦後の年賀状が飛躍的に増えたのは、この翌年の1949年からでした。
それが何故かというと…1949年に、お年玉くじ付き年賀はがきが、発売開始されたんです!
今ではお馴染みの、お年玉くじ付き年賀はがきですが、この時までは無かったんですね。
それまでは、普通の官製はがきを、年賀はがきとして使っていただけで、年賀状専用の官製はがきというものは無かったのです。
それが、京都在住の民間人である林正治氏が、「年賀状が戦前のように復活すれば、お互いの消息もわかり、戦争で打ちひしがれた気持ちから立ち直るきっかけにもなるだろう」という考えから普及のための「賞品くじ付き」「社会の為の寄付金の付加」などのアイデアを考え、郵政省に持ち込み、採用され、この年賀はがきが発売されたのです。
そうして発売された、このお年玉くじ付き年賀はがきは、大ヒットします。
戦後復興にかける思い、新年の祝賀の思いなど、希望に満ちた国民の思いに、このおめでたい、夢いっぱいの年賀はがきが、ぴったり合ったのでしょうね。
これをきっかけに、年賀状の取扱量は大幅に伸びていき、その後も、郵便番号制度の導入や、年賀はがき印刷、写真年賀状、などなど、様々なサービスの普及や多様化を経て、年賀状の歴史は、現在に繋がってきています。
以上、年賀状の歴史や由来についてのご紹介でした。
年賀状って、はっきりした始まりはわからないにしても、こんなに長い歴史と、様々な出来事を経て、現在に繋がってきたものだったんですね。
特に、調べていて個人的に印象に残ったのは、戦争中に年賀状制度が中止されていたことと、戦後の年賀状の完全復活のきっかけが、お年玉くじ付き年賀はがきだった、という話。
年賀状を出せるのは、平和な時代である証である、ということと、日本人は今も昔も、年賀の挨拶とか、くじ引きのような運試しというか夢をみること、おめでたいことが、大好きなんだな~ということが、年賀状の歴史からわかって、昔の人に親近感をもったり、年賀状を出せる平和に感謝する気持ちになりました。
同時に、せっかく年賀状を書ける時代に生きているんだから、大切な人に、もっと心をこめて、年賀状を贈ろうと、年賀状書きの作業にも、気合いが入りますね。
もちろん、作業中の現実逃避…もとい、気分転換にも、しっかり役立ちました!
この記事が、皆様にも、年賀状の良さの再確認やまた年賀状作業面倒だな~と思ってしまった時の、気分転換としてお役立ていただければ、とっても嬉しいです。